あまのじゃくな彼女【完】
「あの日。私が係長を路地で見かけた日です。一緒にいたのは・・・綾江さんですよね?」
「あ、あれは・・・」
焦るように言葉をつづけようとする係長に、これ以上聞きたくない、と強く首を振った。
何も言えないもどかしさを滲ませながらも、私から視線を外そうとはしない。
「隠してた、とかそんなんじゃないって分かってます。私が勝手に係長の優しさに甘えてただけなんです」
ゆっくりと立ち上がり、正面から係長を見据えた。
「もう・・・解放しますね」
「・・・めっ」
「めぇちゃーん!!こっちいるのー?」
舞原さんの声がちょうど遮るように聞こえ、足の震えに気づかれないよう足早にその場を去った。