あまのじゃくな彼女【完】

着付け・メイクを終え居間へと現れた綾江さんは圧巻だった。


袖を通した振袖は淡い雲取り柄、所々に鳳凰や宝尽くしの華やかな絵が入っている。その豪華さとは裏腹に、色合いは落ち着いていて古民家の奥ゆかしい雰囲気を邪魔しない。
それに負けない綾江さんの美しさ。黒髪のロングヘアは丁寧にとかれいつも以上に艶やかだ。その美しさを強調するように、今回は髪は結わずに片側におろしている。



「おぉー・・・やっぱイメージ通りだわ、さすが黒澤綾江」

その美しさに見とれるスタッフ達をよそに、山下さんは1人満足そうに腕を組む。1人ぶれないその姿に、妙に安心してしまった。



「やっぱ正解でしたね、係長」

「あぁ、イメージ通りだ」

少し離れて様子を伺っていた係長も、山下さんの言葉に同意した。


「まぁ彼女なら大丈夫だ」

「そっか、係長は黒澤さんと同級生なんでしたっけ?」

「あぁ、彼女仕事に対するプロ意識は間違いないから」

思い出したように山下さんが問いかける。
本当ならその場にいたくないけど、急に逃げれば不自然になってしまう。仕方なく、気にも止めないふりをしてその場に留まった。

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