あまのじゃくな彼女【完】
「なーに言ってるの、私にあんな事させといてぇ」
私の強張った表情に気付いたのか眉間を人差し指でツンっと小突くと、その指で口元をシーっとしたまま舞原さんが話を続けた。
「今日、前回とスタッフ違うの気付いた?」
「え?・・・あっ・・・」
ふと周りを見渡しても、森枝やこの間陰で愚痴っていたアシスタント達の姿が見当たらない。
舞原さんは大抵1つの作品を作る場合、1度作ったチームで最後まで仕事をする。企画・準備・撮影まで通したスタッフで行うことで、よりよい作品が出来ると考えてるからだ。
その舞原さんが途中でスタッフを変えるなんて。
「『人の意見をロクに聞きもせずバカにするだけなんて、しょうもない部下使ってるんですね』ですって」
「へ?」
「こないだ撮影の打ち合わせでコーエン行ったら係長さんに言われたの。めぇちゃんごめんね、うちのバカ達が失礼な事言ったんでしょ?」
「そんな!舞さんは悪くないです。私がでしゃばってアシスタントの皆さん不愉快にさせただけですし」
確かにあの時の事はショックだった。正直、仕事の事というよりは昔の事の方がひっかかったけど。
私が現場で図々しく意見したのは事実で、プロとして懸命にやっているアシスタントの反感を買うのも仕方なかったのだ。