あまのじゃくな彼女【完】
ふるふると小さく首を振り両腕を組むと、ふぅ・・・と息を吐いた。
「めぇちゃんには無理言って来てもらったわけだし、私の部下の育て方がなってなかったって所ね」
「いえ、とんでもないです。私も呼んでいただけて嬉しかったですから」
私の言葉にほっと安心したような顔をする舞原さん。
あっ、と何か思い出したそぶりを見せると急にニヤついた。
「しっかしあの男、タダもんじゃないわね。ただのデキル男かと思ってたら『あんなスタッフしかいないなら取引やめましょうか』なんて笑顔で言いやがるんだから。ますます惹かれちゃうわねぇ」
唖然とした。確かにあんな陰口言われて仕事に不安が残らないわけがない。
だからって・・・そんな直接的な事言うかな普通。
〝係長”らしくない。彼ならもっと穏便な方法がとれたはずだ。
「でも今日ので分かったわ、生意気な係長さんもめぇちゃんにツバつけてたって事ねぇ。」
「は・・・?いやいや誤解ですって、係長はただの上司です!しかも〝も”ってなんです、〝も”って。舞さんいろいろ勘違いしすぎですよ」
舞原さんの思わぬ指摘に再び心が揺れ動く。舞原さんの言葉を否定するように、自分の気持ちも強く否定する。
「えぇーだってめぇちゃんモテるんだもの。後輩の伊達くんでしょー、それにうちのアシスタントも変な目で見てたけど、係長さんが睨みつけてたから。さっきだって肩なんて抱いちゃってさぁ、良いボディーガードだこと」
ふふっと唇を尖らせ楽しそうに笑う舞原さんに何を言っても無駄なようで。苦笑いでその場を乗り切るしかなかった。