あまのじゃくな彼女【完】
握っていた手を2人の間、ちょうど胸の高さまで持ってくると
「それで早速今度、重役集めて上映会するんです。吉村さんも来ますよね?」
少し首をかしげながら懇願するように言った。
ここだけ見るとなんか〝胡散臭い王子の求愛”って感じだけど、伊達くんがするとなんのやましさも嫌味もないからすごい。
さすがお姉さまキラー・・・と妙に納得した。
「いや、私は裏方だし遠慮しとくよ。社内上映会楽しみにしてるね」
「そう、ですか・・・それじゃ楽しみにしていてくださいね、絶対びっくりしますから!」
一瞬しゅんとした表情をみせたけど、すぐにチラリ八重歯を見せながら可愛らしく笑った。私への報告が終わり、るんるんっと跳ねるようにして課長への報告に向かう伊達君を見送った。
伊達君オーラに癒されほっこりと気を緩めていると、ふと視界の隅から感じる視線。
「はい、高遠です・・・はい・・・えぇ」
内線を取る音とともに視線から解放される。
編集作業が難航したおかげで、係長も最近は不在がちだった。
この視線にとらわれることもなかったから、私も穏やかに部下としての距離を保つことができていたんだ。
あの日までは。