あまのじゃくな彼女【完】


その日、外のランチから帰るとエントランスがざわついていた。


何事かと由梨と野次馬していると、

「今日、黒澤綾江来てるんだってぇ」
「うっそー見てみたぁい!」

みれば遠くで、赤いワンピース姿がエレベーターへと案内されるのがわずかに見えた。




そういえば今日は、例の重役への報告会だ。それに合わせて、綾江さんも来てくれたのだろう。

わざわざ報告会まで来てくれるなんて・・・やっぱり彼女のプロ意識はすごい。



「芽衣子、休憩終わるよ。課長にねちねち言われちゃう」

ぼーっとする私を現実へと引き戻すよう、由梨が私に耳打ちした。



報告会という事は、午後から彼もオフィスにはいないはずだ。

少しホッとするような、そわそわと落ち着かないような曖昧な気持ちを抱え午後の仕事へとむかった。

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