あまのじゃくな彼女【完】
いつかのデジャブに思わず動きを止める。
苛立ちを浮かべた顔を更にグッとゆがめると、綾江さんは私を一瞥した。
「なんなのあなた。物分りが良いようで、いつもこうして邪魔ばかりするのね」
「おい、綾江。こいつは関係ない」
一瞬で身体が強ばるのを感じた。綾江さんのその一瞥で、私への恨みや憎しみ全てを感じ取った気がしたからだ。
「どうしたの〝吉村さん”、何か頼まれた?」
「あ、総務が手が足りないらしくて・・・ここの片づけをと」
あぁなるほど、と笑い声の漏れていた部屋の方へと視線をやる。
「この後アポが入ってるんだ、手伝えなくてごめんね。誰か手伝うように声掛けとくよ」
そう言うと踵をかえし、何も言わずに私がいるのとは反対の扉へと歩きはじめた。
「ちょっ、話は終わってないわよ!隼人!!」
綾江さんの制止など聞こえなかったかのように黙って部屋を後にすると、バタンっと重厚な扉がゆっくりと閉まる音だけが響いた。