あまのじゃくな彼女【完】
「社長、以前もお伝えしたように僕は今の課から動く気はありません。まだやる事もありますし、異動の件はお断りします」
それだけ伝え踵を返し、さっさと来た道を戻ろうとした。
重厚な扉に手をかけ、ぐっと力を入れた所で
「話ぐらいちゃんと聞いていきなさい」
低く重々しい声で呼び止められた。
書類をデスクへ軽く放り投げると、両肘をつき口元で手を組んだ。その威圧的な態度にお偉い方が冷や汗を流す所を何度となく見てきた。
だけど俺にしてみれば数十年の付き合い。それが彼の一種ポーズだということもわかっていた。
正面から向き合う時なのかもしれない。
声に従うように、威圧的な声の元へと向きを変えた。