あまのじゃくな彼女【完】
「おいコラ百面相、掃除終わったのか?」
「ぅわっっ、宏兄!終わった終わった!!」
神棚に拝みながら、うっかりトリップしていた。
ビクッと顔をあげると、目の前に袴姿に身を包んだ宏太(こうた)兄ちゃんが竹刀を持って立っていた。
我が家は『吉誠剣道教室』。
おじいちゃんの代から続く、剣道教室だ。
今はお父さんが指導している。
宏太兄ちゃんは中学校で体育教師をしながら、道場を手伝っていて、ゆくゆくは跡を継ぐ予定だ。
「なんだお前、昨日はえらく帰り早かったみたいだし。さては男にでも振られたか?」
片手でもった竹刀を肩に担ぎ、ニヤニヤしながら言った。
「はぁ!?違うし。振られるも何も彼氏なんかいませんー」
「なんだよお前、男もいねぇのかよ!俺の妹だってのに信じられん。朝稽古やらずに女磨けよ」
「うっさいなぁ。別にいいじゃんいなくったって。宏兄みたいにみんな相手がいるってもんじゃないんですー」
むっすーとむくれた顔で睨んだ。