あまのじゃくな彼女【完】
はぁ、と深く息を吐くとその重低音の声が更に重みを増した。
「・・・女か」
「何ですそれ、仕事に女を絡めた事なんてありませんよ」
冗談じゃない。
俺が“コーエンの”高遠だとわかってから、一体どれだけの人間が態度を変えた事か。
高校時代、大会社の跡継ぎだとバレてからみんながこぞって俺に媚び売ってきた。女子達は元からしつこく構ってきていたけど、教師達までペコペコし始めたのには目を疑った。
20代で係長に昇進した時には「どうせ女専務に色目を使ったんだろ」とぼやいてたくせに、今となってはご機嫌を伺ってくるお偉方。