あまのじゃくな彼女【完】
「でもそれだけだ。利用・・・したのは悪かったと思う。ちゃんとあいつとも話すよ」
まっすぐ正面を向いたまま、しっかりとした面持ちで話す俺を確認すると、ようやく宏太はカウンターへと身体を戻した。
そのままの勢いで、我慢していたかのように一気にビールをあおった。
「お前がちゃんと話すならいいよ。ってか、芽衣子ともちゃんと話せや。あいつ最近おかしいぞ」
おかしいのはきっと、綾江がめいに絡んでいるからだろう。
いい加減隠し通すのも難しい。変な所から話が行く前に、俺の口からめいに話をしなければ。
でもそれは、めいと離れてからの方が良いだろう。
「めいとは異動終わったらちゃんと話す。綾江の事・・・ごめん」
「なんでお前に謝られるんだよ。ふざけんな」
串にかぶりつきクイっと肉を引き抜くと、苦々しげに宏太がつぶやいた。
宏太が綾江をずっと見守ってきたのを俺は知っている。自然と謝罪の言葉がでた。
話を済ませると、ようやく肩の荷がおりたようで途端に力が抜けた。
宏太に続くよう串に手を伸ばしかぶりつく。気が抜けたのと炭の香ばしい香りが、急に食欲をそそる。
「ま、お前が芽衣子にフラれたらそっちもフォローしてやるよ」
ぶふっと吹き出しそうになり慌てておしぼりに手を伸ばす。
「ゲホッ・・・お、お前こそふざけんなっ!!」
慌てふためく俺をよそに、 してやったり顔の宏太。
ニヤけた顔でこちらの様子を伺いながら再びジョッキに口をつけた。
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