あまのじゃくな彼女【完】
綾江さんから聞いた事実はどうにも受け止めがたかった。
「あなた〝高遠”って名前なんだと思ってるのよ。ここの社名のまんまでしょ。まぁ今の社長は婿に入らなかったから苗字違うけどね。だからこそ隼人に継がせたいんでしょ」
高遠(コーエン)って・・・
なんなのその適当な社名、もっと考えて付けなさいよ。
混乱する頭の中で、どうでもいい突っ込みをしながら必死に反芻していた。
『会長の孫、社長は伯父、跡取り』
いくら〝THE・パーフェクト”って騒がれてても、社内の誰もそこまで知らないはずだ。
今の今まで誰もそんな事を口にした事は無い。
本当に、本当に傍に居ちゃいけない人だったんだ。
ぐっとこみあげる何かを堪えるよう、力んだ足でエレベーターへと乗り込んだ。