あまのじゃくな彼女【完】
「大丈夫ってなんですか。いやぁすごいですね係長!でも係長いなくなったら課長ちゃんと仕事しますかねぇ」
「うぉ!それマジでヤバいなぁ。どうなるんだうちの課ぁー」
おどけて話す私に乗っかるように、みんなが途端に企画課の行く末を心配しだした。
それだけ係長の存在はうちにとって大きいのだ。
誰かが言った冗談に笑い、誰が係長にあがるんだろうかという憶測まで飛び交い始める。
「すみません、ちょっと」
へへっと笑いながらみんなの輪から抜けるとまっすぐに廊下へと向かった。
オフィスの扉を開けトイレへと急ぐ。誰にも見られないよう自然と俯く姿勢になった。
「芽衣子?おはよーどしたの、トイレ?・・・って芽衣子?」
出社してきた由梨に見つかり、仕方なしに顔をあげると怪訝な顔で伺われる。
「・・・っふぇ・・・ゆりぃー・・・っ」
俯き誤魔化していたのも由梨の顔を見た途端、我慢できずボロボロと大粒の涙がこぼれおちる。
拭うことも出来ず、嗚咽がこぼれる口をどうにか片手で抑えた。
「はぁ?何なのちょっと、芽衣子?ちょっと・・・!」
戸惑う由梨に何を言うでもなく、すがるように抱きついた。
零れ落ちる涙で由梨のブラウスが濡れていくけど、それを気遣う余裕もなくて。
ただただ、何かにすがっていないと崩れ落ちそうだった。