あまのじゃくな彼女【完】
ここ数日係長が不在がちなのをいいことに、私は完全な抜け殻だった。
「跡取り」だという事実と、それを現実だと言わしめる辞令。
簡単には誰にも言えず、脳内をぐるぐると渦巻き続けていた。
おかげで仕事は散々。新人時代以来、山下さんにどやされる毎日だ。
呆けた私を諌めるよう、由梨が肩を抱き話しかけてくる。
「芽衣子。あれだけ部下として頑張る!とか言っておきながら、やっぱり寂しいんじゃない。素直に近くに居たいって言えばいいのに。でもあの係長がうちの、それも係長に収まるような人じゃないって分かるでしょ?そりゃあ」
「・・・つぎ」
「なに?引き継ぎ?」
「後継ぎ、なの。シュンちゃん、うちの後継ぎなの」
ポカンと口を真ん丸にあけ固まる由梨。それでも真意を探ろうと考えているのが、眉間に寄せた眉で分かる。
「うちって、道場の?何、結婚するの?」
「違うよ、コーエンの後継ぎ。会長の孫なんだって」
「は?」