あまのじゃくな彼女【完】
丸かった口はあんぐりと開き、目は大きく見開き固まった。
あぁ普通社員が聞くとこんな風に驚くんだなぁ・・・と観察してしまう。
それとは違う戸惑いを感じる私って、やっぱり部下としては失格なのかな。
「高遠会長の孫なんだって。みんな知らない、よね?」
「え、芽衣子、そんなすごいこと隠してたのっ!?」
「違う違う!私も最近教えられたの・・・綾江さんに」
由梨は〝綾江さん”という単語を聞いた途端、眉間にしわを寄せ不機嫌な顔になった。
最初に綾江さんから牽制を受けた事を話して以来、由梨の綾江さんの印象は最悪のようで。
「幼馴染にそこまで目くじらたてるなんて了見の狭い女!」と怒りをあらわにしていた。
「なんで芽衣子も知らないような事、あの女が知ってるのよ」
ぐっと息が詰まるのを感じた。
由梨の言葉そのままの事を自分でも思っていたからだ。
20年以上もの付き合いになるというのに、何でそんな大事な事を黙っていたのだろう。
彼にとって私は、大事な事を言えないような相手だったのだろうか。