あまのじゃくな彼女【完】
そのねこっ毛がチラリと見えた瞬間、走り出していた。
飲みかけの紅茶はそのままに。由梨と千葉さんを半ば押しやるようにそこを飛び出すと、彼が来た方とは反対の方へと廊下をかけた。
徐々に息切れし、ヒールを履いたつま先にジンと痛みを感じる。
だけど止まっちゃいけない。
後ろを見ちゃいけない。
気づけば廊下の端を通りすぎ、人気の少ない資料室付近にまで逃げ込んでいた。
ようやく足を止め、はぁ・・・っと呼吸を整えるのを許す。
痛むつま先を少しでも解放させるのにパンプスを脱いでしまおう、と靴に手をかけた時。
その手を背後から掴まれ、そのままの勢いで身体が回れ右をするとシルバーフレームの視線に射止められた。
「何で・・・逃げるの」