あまのじゃくな彼女【完】
綾江さんも宏兄も、お父さんやお母さんも。
あぁあの時そういえば、きっとタケさんも。
みんな知ってる事だったんだ。
なのに、私は何も知らなかった。教えてもらえなった。
私だけ、信じてもらえなったんだ。
強い疎外感とやりようのない無力感。
自分の言葉に虚しさが増す。
私の言葉に反応することなく立ち尽くすシュンちゃん。まるで私の虚しさに比例するみたいに、彼の瞳の闇は深まるように見えた。
一歩踏み出し彼に近づくと、あの部屋で薫ったいつもの優しい香水の香り。
すれ違いざまにかすめた手の甲。微かに感じるその熱に胸がざわめく。
この大きな温かい手に無条件に甘えられる日は、きっともう来ないだろう。
彼の反応を待つことなく私はその場を立ち去った。