あまのじゃくな彼女【完】
「やめてっっ・・・!」
大地を遮るようにとっさに出た声は、思いのほか低く冷たくて。
はっ、と慌てて顔を上げる頃にはもう遅かった。
私の声にぐっと堪えるよう唇を噛みしめた大地は、そのまま何も言わずに走り去っていった。
子ども相手に何ムキになってるのよ。
大人げない態度に自分でも呆れる。情けなさと自分の動揺っぷりに嫌気がさす。
ぼーっと道場の床を眺めていると、
「おい、芽衣子」
いつの間にか門下生たちは皆いなくなり、道場内には宏兄と私だけになっていた。
「ごめん。大人げないことした」
指摘される必要もなく、自分でもありえない態度だったと思う。
深いため息をつく宏兄。呆れられて当然だ、小学生相手に何を八つ当たりしてるんだ。
「ちょっと座れ」
さっとその場に胡坐をかき、トンと床を叩き私を促す。その声は予想に反してとても優しく、声に導かれるように素直にその場に腰を下ろした。