あまのじゃくな彼女【完】
綾江さんも宏兄も。きっとお父さんもお母さんも。
あぁそういえばあの時・・・タケさんさえも知っているのに、私には何一つ教えられなかったんだ。
「やっぱり宏兄も知ってたんだね」
自分の無知が情けなくて恥ずかしくて。
目頭が熱くなるとの同時に、心は冷え切ってしまいそうだった。
ふぅっと長いため息をつくと、宏兄は意を決したかのように話し始めた。
「あいつ昔っからあの会社が好きでさ。きっと大人になったら会社入るんだろうな、とは思ってた。それが急に後継者だなんだと周りが言い始めて強要されてさ。あんなんじゃ人間不信にもなるわ」
昔を思い出したのか、苦々しい顔をして天井を見上げた。
シュンちゃんが言ってた通りのようだ。
周囲の人間が急に変わってしまった。シュンちゃんは変わって・・・ない?
でも、それでも。
「結局・・・私は信じてもらえない側の人間だった、ってことでしょ?」
自分で言った言葉が胸をえぐる。
冷え切った心は激しく揺さぶられ、今にも泣き崩れてしまいそうになる。