あまのじゃくな彼女【完】
「それは違うだろ」
私の様子に気づいたのか、宏兄の声は優しく私をなだめるように話をつづけた。
「多分、お前を信じてなかったわけじゃなくて、お前にだけはどうなったって傍にいて欲しかっただけじゃないか?跡継ぎになって、近づいてきた奴だけじゃない。離れてった奴もいるからな」
伏し目がちに語る宏兄はどこか寂しげで、きっと〝離れてった奴”の事も知っているのだろう。
私がシュンちゃんから離れる?
そんな事、出来っこない。
これまでどれだけ離れようとしても、結局その手にすがってしまっていたのに。
寂しげな顔をあげまっすぐに私を見据えた宏兄は、至極真面目な顔をしていた。
「一応聞いとく。お前、〝跡継ぎだった”って事と〝教えてもらえなかった”って事。どっちがショックだったわけ?」
宏兄はまっすぐな視線で私を射抜き、まるで尋問を受けているみたいだ。
大丈夫。もう答えは出てる。
「〝教えてもらえなかった”事、だよ。その理由もちゃんとシュンちゃんの口から聞きたい」
まっすぐに宏兄の目を見て答えた。
「俺の親友をあんまりいじめてくれるなよ」
ニヤリと口角を上げると、私の答えに安堵したのか宏兄は満足そうに頷いた。