あまのじゃくな彼女【完】
最上階へとエレベーターが着くと、美しい黒髪を揺らしながら華奢な背中が降りていく。
ヒールの音にふと我にかえると、慌ててその背中に続いた。
訳がわからないまま、重苦しい足を無理やり動かす。
ガラス越しに見える景色にいつもなら気分も上がるはずなのに、今日ばかりはそんなの見ている余裕なんて無い。
「ごめんなさい、ね」
ふと前を行く背中が止まり、危うくぶつかりそうになる。
前を向いていた顔を外の景色へと向けると、綾江さんは自嘲の笑いを浮かべた。
「宏太にも怒られたわ。自分が出来なかったからって、隼人に執着するなって」
「え・・・?」