あまのじゃくな彼女【完】
戸惑いと混乱で大した反応も出来ない私をよそに、綾江さんは淡々と話を続けた。
「黒澤不動産って分かる?あれ、うちの会社なの」
黒澤不動産といえば、疎い私ですら知ってる大企業だ。駅前の有名なショッピングモールからオフィスビルまで幅広く手掛けている。
トップモデルで、実家は指折りの大企業。
“天は二物を与えず”って・・・絶対嘘だ。
「私、長女だから実家継ぐつもりだったのよ。経済学部にも進んで。でもモデルも諦められなくって。悪あがきで受けたオーディションに合格しちゃったってわけ」
すっかり身体を私の方へ向けると、綾江さんはおどけるように笑った。
いつものツンとした印象とは違い、何だか清々しく穏やかな顔をしている。