あまのじゃくな彼女【完】

「それでモデルの仕事が軌道に乗っちゃったら、両親揃って“弟に継がせるからモデル頑張れ”って言うわけ。私は二足のわらじで両立させるつもりだったのに」


どんな豪華なわらじですか、って突っ込みは出来ず。

唇を尖らせむくれているのに、綾江さんは何だか絵になる。
そんな彼女の美しさに目を奪われ、ご両親の判断は正しかったなと思う。


「私、綾江さんの事、尊敬してます。仕事に対するプロ意識とか・・・素人目線ですけど」


“継ぐつもりだった”

その言葉に正直驚いた。
経済学部にまで進み、長女として跡継ぎの責任を果たそうとしていたのだ。我が儘なイメージや噂ばかりじゃない、彼女の真面目な人柄が垣間見えた。



「そう?ありがと」

ふふっと笑う綾江さんはどこか照れくさそうで、可愛らしい雰囲気だ。
あれだけ敬遠していたはずなのに、そんな仕草が憎めない。

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