あまのじゃくな彼女【完】
5 :
満員電車の中、どうにか扉付近の位置を確保するとぼんやり電子案内を眺めていた。
路線が違うとはいえ、この時間帯の混雑はどこでも同じらしい。
ぼんやり考えてると車内アナウンスが目的の駅名を告げ、慌てて人波に乗り電車を降りる。
ため息をつく間もなく、流れに身を任せるようにホームを後にした。
外の冷たい空気に身を震わせ、くいっとストールを口元までしっかりとあげる。
寒さから逃れるようポケットに手を突っ込むと、ちょうどいいタイミングで携帯電話が震えた。
「もしもし?」
「あ、よかった出た。おはよう芽衣子」
バタつく朝にこうして電話に気付くのも珍しい。由梨からこうして通勤時間にかけてくること自体初めてだ。
「今日からでしょ?お尻叩いてあげようかと思って」
「ははっ。ありがと」
私の緊張を見抜いてか、親友のふざけた言葉にほっと気が緩む。
「にしても急過ぎる。千葉さんも怒ってたわよ」
「やっぱり?今度奢ってあげなきゃ」
可愛い顔を歪めて睨み付けてくる姿が目に浮かんだ。