あまのじゃくな彼女【完】
あまりの展開の早さに、当の私もまだ理解しきれていないところだ。
だけど私に拒否権なんてない。
それが、経営者直接の意向なら尚のこと。
「芽衣子もいないんじゃ、ほんとうちの部署思いやられるわ。ったく・・・少しは相談してから決めたって良いじゃない」
「うん、ごめん」
わざとふて腐れるような声色で話す由梨が何だか可愛くて、思わず笑いそうになって必死に堪えた。ここで笑えば親友のご機嫌を損ねてしまうのは目に見えている。
「でもね、芽衣子」
「ん?」
「あんたなら大丈夫。頑張っといで」
由梨の言葉に思わず足を止めた。
いつだってそう。由梨は本当に欲しい時に欲しい言葉をくれる。
寒さと緊張で力んでいた肩の力が抜けるのを感じた。
由梨に礼を言い温かい気持ちで電話を切ると、1人戦いの舞台へと再び歩き始めた。