あまのじゃくな彼女【完】

「わかってないのはお前だ」

「えっ・・・!」


脳内読まれたみたいに、するどくつっこまれて思わずギクッとする。

「澤田じゃなくて、めいの話。ドレスと和装」

「は?」

「は?じゃないでしょ。めいはどっちが着たいかと思ってね。まぁ両方着ちゃえばいいんだけど。おぉ、澤田・・・じゃないや吉川おめでとう」


あんぐり口を開けている私をよそに、シュンちゃんはちゃっかり素晴らしいタイミングで由梨にフラワーシャワーをかけた。


「ぁああっ!!!写真!!お花!!」


一瞬気を取られたせいで、せっかくのシャッターチャンスをみすみす逃した私は慌てて花びらを由梨にかける。

「あははっ!芽衣子ったら、何人の結婚式でいちゃついてるのよ。上から見えてたわよ」

「ち、違っ・・・!んもう!シュンちゃんっっ!!」

恥ずかしいのを誤魔化すようにキッっと睨みつけるけど、シュンちゃんにはまるでこたえない。それどころか軽く眉間にしわをよせ、呆れた表情で私を見下ろす。


「お前の親友、本当に鈍感で困る。自分の結婚式の話されてるのに、全然気づかないでさ。どうにかしてやってよ」

「あはは!芽衣子が鈍感なのなんて、今に始まった事じゃないですよ。この子には直球で言わないとダメですよ」

「まぁね。でも俺ちゃんと直球で言ったはずなんだけどねぇ・・・」


ふぅやれやれ・・・といった表情で私を見やるシュンちゃん。

いやいや、それじゃあまるで私が悪いみたいじゃない。プロポーズされた記憶なんてないし、キスすらあの日以来してない。ましてその先なんて・・・非常に心外なんですけど!

「ぷ・・・プロポーズなんてされてない!」

「いーや、ちゃんと言った。はっきり言った。返事もしてもらえてないけどね」

自信満々なシュンちゃんの態度に思わずうろたえる。
本当に私が悪いみたいじゃない。必死に記憶をたどるけど、そんな甘い時間記憶にない。


< 289 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop