あまのじゃくな彼女【完】
「〝結婚、しましょうか?”」
「へ?」
「会社で言っただろ?〝結婚、しましょうか?”って。めいには嘘つかないって言っただろ」
すべてが始まったあの夜。会社の給湯室。
うさんくさい笑顔を貼り付け、私に勝手にキスしてきたあの時。
「あ、あれ!?プロポーズ!?」
「プロポーズ以外なんだっていうんだ?なんだ、もう1回言おうか?結っこ・・・」
「あああああぁっ!!んなっ、なんで今言うのよ!!」
かあぁっと頬が熱くなるのを感じる。なんでそんな大切な事、あんなので済ませるのよ。信じらんない!
しかもまた言い直すって、こんな人前で。
はっ・・・と気が付き慌てて周りを見ると、いつの間にか由梨がブーケトスの準備に入っている。
「芽衣子にはブーケ必要ないでしょ?そこで見ときなさいよ」
「先輩、人前でいちゃつくのやめてくださいよぉ。ラブラブなのはわかりましたから」
千葉さんを始め、企画課の面々がニヤニヤしながらこちらを伺っている。
隠してたわけじゃないけど、わざわざ報告したわけでもない。むず痒い所を晒すみたいで、恥ずかしさから更に熱はあがる。
「今更隠そうとしても無駄。だから諦めて。俺と結婚しよう?」
そっと後ろから身体を包み込まれ、耳元で諭すようにささやかれる。
「ん・・・」
「返事は?」
「ほっ・・・保留っ!!」
ぶっ・・・!と私の頭上で吹き出すと、目立たないよう必死で笑いを堪えるシュンちゃん。
とっさに出た一言。呆れられたかと心配したけど、それとは逆にぎゅっと包み込む腕に力を入れた。
「あぁ~やっぱり俺の彼女は素直じゃないなぁ」
言葉と裏腹。慈しむような優しい声でそうつぶやくと、私の唇にそっと優しいキスを落とした。
***END**