あまのじゃくな彼女【完】
「きっ・・・きっつ・・・」
最初は早歩き程度だったのに、途中からは本格的にダッシュしてしまい息が切れる。
ヒールの無い靴履いてきてよかった、と変に満足した。
どうにか、最初の通りまでもどってきて一息ついた。
街中でいい大人が息切らしているのが目立つんだろう、じろじろと行きかう人に見られる。
振り向く前に逃げてきたし・・・ばれてないよね。
とりあえず、このまま人混みに紛れちゃえば大丈夫。
第一なにも悪い事してないし!大丈夫!
よし、と息を落ち着かせて歩き出そうとしたところだった。
ぐいっと手首を後ろに引かれ、その勢いで身体も後ろへ向きをかえられる。
目の前には体躯のいい、それでいて引き締まった胸。
そしてあのスパイシーで優しい香り。
「こんにちは、吉村さん」
目を少し細め、いつもとは違う意地悪な表情で高遠係長はにやっと笑っていた。