あまのじゃくな彼女【完】
3:
なぜこうなった。
いとも簡単に捕獲された芽衣子は、脳内排除を試みた高遠とカフェにいた。
向かいに座った高遠は、飄々とした顔でコーヒーを楽しんでる。
「ねぇ、吉村さん飲まないの?」
「あ、はい。いただきます、係長」
促されてから、ようやくコーヒーに手を伸ばした。
こうして間近で見ると、ますますいつもの係長とは違う事がわかる。
髪型・メガネが無い事・・・それだけじゃない、話し方に笑い方も違う。
休日モードと言えば聞こえはいいけど、これじゃ完全に“別人モード”。
「あの・・・」
「何?」
「係長、です・・・よね?」
「見ての通り、俺は高遠隼人ですよ?」
あの夜と同じ、ニヤッと口角の右側だけをあげて笑う。
「なぜ私は係長とコーヒーを飲んでいるのでしょう」
「そら、吉村さんが逃げるから俺が捕獲したからでしょ」
「にっ逃げるなんて!私なにも悪い事してないです」
「じゃあなんであんな全力ダッシュしてんの」
「うっ・・・見てたんですか?」
「くくっ・・・だってあんな人通りの少ない所でいい大人が全力ダッシュしてんだぜ?目立つに決まってんじゃん。しかもよく見れば職場の部下だし」
「おっしゃる通りです・・・」
恥ずかしさで顔を伏せる。
変にダッシュせず、早足で立ち去ればよかったと後悔した。