あまのじゃくな彼女【完】
「係長、なんですか?」
視界の右隅にいた、高遠係長に目をやりすくっと立ち上がった。
「今度のコンペに出す資料なんだけど、木村手伝ってやってくれないかな?」
「ああ、木村君って来週のイベントもかかえてましたよね」
書類の束を受け取ると、 ざっと目を通した。
2年目の木村君には、コレ確かにヘビーだなぁ・・・
「木村、イベントの方で少し手こずっててね。
この間頼んだ書類はあとに回して大丈夫だから、お願いできるかな?」
ちらっと目をあげると、高遠係長はこげ茶のねこっ毛頭をぽりぼりかきながら、
眉尻を下げている。
「了解しました。書類もあと少しなので大丈夫かと思います」
「ありがとう。吉村さんは本当に仕事が早い」
にこっと笑うと少し目が細くなる。
この人懐っこい笑顔に、女子社員はやられるんだろうなぁ。
ふむふむ、と変に納得しながら芽衣子は再びパソコンにむかった。