あまのじゃくな彼女【完】
コーヒーを片手に、高遠は視線だけ上にあげ、んーとうなった。
「よし、こうしよう吉村さん」
「もしばれたら、“俺は吉村さんとキスする仲”って話してみんなの誤解を解く」
はい?
「ほら、吉村さんとそういう事ってなったらみんな納得してくれるでしょ?吉村さんが居るのに、よそで遊んでるなんて誰も思わないって」
「いやいやいやいや!!何ですかそれ、意味わかんないです。しかも嘘つかないでくださいよ」
「あながちウソでもないでしょ?キスする仲じゃん。吉村さんと付き合ってるってなれば他の女子社員も近づかないだろうし。あーなんだ、グッドアイディア」
開いた口がふさがらない。うまく表情が作れなくて、口の片側がひくひくっと動くのがわかる。
「吉村さんが“結婚したいな”って言ってたことも、つけちゃおっか」
「そっ・・・それは!」
いかん、それは恥ずかしすぎる!
変な噂を流されるより、あんなキャラじゃない発言言いふらされる方がよっぽど恥ずかしい。
「よし、交渉成立だね。お互いの秘密、絶対に内緒だよ?」
さっきまで悪代官のようなだった高遠が、「高遠係長」モードの柔和な笑顔でこちらを見つめていた。