あまのじゃくな彼女【完】
3* 胸、ざわめく
1:
秘密の約束から1か月が経った。
あれからの「高遠係長」は相変わらずだ。
あの日「秘密にしてね」とか言いながら、私にばれても全然焦っていなかった。
それなら私の方が不利な約束なんじゃないかって。
“何かのときの保険”として弱み握られたような。
そんな私の不安をよそに
「吉村さん、この書類よくまとまってたよ。ありがとう」
シルバーフレーム付の柔和な笑顔は相変わらずだ。
「ど、どうも」
返事がたどたどしくなっちゃう気がするけど、周囲に変に思われる程ではないみたい。
仕事の会話以外、係長から話しかけることはない。
あれは夢ではなかった・・・よね。うん。
でもこのままいけば、夢だったってことにできそうだ。