あまのじゃくな彼女【完】
「あーやっぱり足がでるな。もちっと削らないと」
「会場費、結構しますよね。確かに雰囲気素敵だし、仕方ないのかなとも思いますけど」
手渡した書類を一緒にのぞきながら、2人そろってうなった。
山下さんは新しいCM企画をメインで進めていて、最近とにかく忙しい。
外出も多くなかなかオフィスにいないので、会えるときに捕まえないとひたすらすれ違ってしまう。
「ここの建物やっぱいいよな。レトロな雰囲気が作りものとは違うっていうかさ。やっぱり本当に古い建物でしか出せないわ」
今度のCMの舞台は、築100年の古民家が候補に挙がっている。
新発売のお茶のコンセプト“昔ながらの中に新しさを”から選ばれた。
「でもなぁ、あの家のオーナーが頑固親父でさ。いや、頑固っつうか業突く張りっていうの?」
「それでこんなに会場費だけ高いんですね」
「うーん・・・ま、口説き落としてみせるよ。ありがとな」
困ったような顔をしつつも、自信をちらつかせながら山下さんはまた出ていった。
山下さんが言うのだから、勝算があるのだろう。
係長ほどではないけれど、山下さんにはどこか人たらしな面がある。
そんな性格はいろんな交渉で有効に働いているようで、今回のCM企画のリーダーにもすんなり山下さんが決まった。