あまのじゃくな彼女【完】
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CM企画で慌しい日々が続いている中、その日は朝から最悪だった。
「芽衣子、ご飯は?」
「ごめーん!!時間無い!」
珍しく寝坊し、母が作る朝ごはんも食べずに家を飛び出した。
おかげでいつもより遅い電車になっちゃって、混み具合も最悪。
そんな中でも、痴漢を働こうとする輩はいるもので。
混雑する車内、器用にお尻に触れる指に嫌悪感でいっぱいになる。
こっちは急いでるってのに・・・
もう我慢ならない・・・!
扉が開き降りる寸前で、ぐいっと手首をつかんでやった。
「ちょっとあな・・・」
言い終わる前に、つかんでいるのと反対の手でドンっと突きとばされた。
「痛っ・・・ちょっ待ちなさいっ・・・!!」
ちかんは脱兎のごとく走り去り、ポツンと私だけが取り残された。
突き飛ばされた衝撃でホームに座り込んでいると、邪魔そうに見られている事に気づき急いで立ち上がる。
くっそおぉぉ!!と叫びたいのをひとまず堪え、パンパンっと黒のチノパンをはたく。