あまのじゃくな彼女【完】
「お、吉村珍しいな。この時間だったっけ?」
グレーに細いストライプの入ったスーツに身を包んだ山下さんだった。
「おはようございます。今日は寝坊しちゃったんで」
山下さんの様子を伺うけど、どうやら尻もちまでは見られていなかったようだ。
「へぇ珍しいな。ってお前、ケツ白くなってんぞ」
「えぇっ!?うそ、ほんとだ!!」
チノパンのお尻の部分が、くっきりと白く汚れていた。
はたいただけじゃどうにもならない。これはクリーニングに出さないと取れないな。
「すっげ、ペンキ塗りたてに座ったのかよ」
「違いますよ!そこまでドジじゃないです!ちょっと転んじゃって・・・」
「ふはっ、それも十分ドジだろ。気を付けろよ」
あははーと笑いながら、カバンでお尻を隠した。
あのヤロウ・・・今度会ったらクリーニング代請求してやる。
顔もうろ覚えのチカン野郎にいら立ちながら、会社へと急いだ。
会社のロッカーには制服が置きっぱなしになっている。
うちの会社では、研修期間中は制服指定。
研修後は自由なので、時に社外のおつかいを頼まれる私は基本パンツスタイルだ。
今日の服はシンプルなボウタイシャツだったので、制服の紺スカートを合わせてもおかしくない恰好に仕上がる。
急いで制服のスカートに履き替えオフィスに向かう頃には、始業時間ぎりぎりだった。