あまのじゃくな彼女【完】
我慢の限界に近づいたのを自覚し、少し頭を冷やそうと思い立った。
「申し訳ありません、山下に一度連絡を入れてまいります」
立ち上がろうとすると、携帯を持った手をぐっと引っ張られ、元の座椅子に座り込んでしまった。
「あんな男、どうでもいい。ほおっておけほおっておけ」
「しかし・・・もしかしたら事故にあったりしたのかもしれませんし」
「あ?あの男が事故にあった所でどうってことない。それよりわしとは飲めんというのかね?」
うん?とテカりに赤みの加わった顔を傾け、私の顔を覗いてくるでっぷりおじさん。仕事・仕事・仕事・・・脳内リピートで、どうにか冷静さを呼び戻そうとする。
「では新しいお酒でも頼んでまいりますね」
ひきつった笑顔でひとまずこの場から抜け出そうと試みたが、坂上の手が緩まる気配はない。