あまのじゃくな彼女【完】
「あっの・・・坂上さん、手を」
「なんだ酒ならまだある、それよりこっちでお酌しないか」
ぽんぽんと自分の座るすぐ脇を叩いて、こっちへ来いを促してくる。
そんなセクハラホイホイ冗談じゃない。
「いいから」
「いえいえ」
「ほらこっちに」
「いえいえ」
酔っているとはいえ相手は男。でっぷりとした手を振りほどく事は出来ず、シーソーのように交互に手を引き続ける。
あーっもう!!
しびれを切らしてえいっと勢いよく手を引くと、引く力が強すぎたのと坂上の手が脂ぎっている(ようにみえた)のもあり、男の手はするりとほどけ、私だけがそのままの勢いで後ろにずてんと倒れこんでしまった。
あわてて体を起こそうとすると、足元の方から下卑た笑いが再び聞こえ嫌悪感でぞっとする。
「まぁそっちの方が良いならいいんだよ。わしがそちらへ行こうじゃないか」
坂上がよいしょっと立ち上がるのが、視界の片隅にうつった。
無防備に投げ出していた足をあわてて閉じ、スカートのすそを限界まで下に引っ張る。そこまでが精一杯で起き上がるところまでは間に合わない。
やだ。気持ち悪い。こっちくんな。やだ・・・やだ、やだ。