あまのじゃくな彼女【完】
「・・・で」
顔を向けずに係長が言う。
「君は何をしているのかな?」
はぁ・・・と深いため息とともに振り返ると、ゆっくり私のそばまで近づきしゃがみこんだ。
「俺がどれだけ焦ったかわかってる?オフィス戻ったら、千葉が吉村に代わったっていうし。それで山下に連絡したら、吉村と連絡つかないって。あのハゲ親父はとっくに家出たっていうし」
「え、携帯・・・あっ電池」
手元の携帯を探ってみると、うんともすんとも言わず画面は真っ黒になっていた。
「あーまじ、ふざけんな」
ガクッとうなだれた頭を、ガシガシと片手で無造作にかきむしる。
「千葉は俺が同行するってこと知らなかったみたいでさ、山下にだけ連絡したんだな。俺も外回りが押して遅れるって山下連絡したら、あのハゲもう家にいないっていうし、誰かさんは携帯きれてるし。それで近くにいた俺が、ダッシュでここまで来たってわけ。案の定なんかとんでもない恰好で倒れてるし、しかも今日に限ってなんでスカート履いてんだよ」
本当に今日は朝から最悪だ。でもこればかりは、不運だけではない私の至らなさだ。
「す、すみません」
声が上ずりそうになり思わずぐっと下唇を噛んだ。
「なにが?何に対してのすみません?」
「仕事なのに、取引先の方に・・・失礼を・・・」