あまのじゃくな彼女【完】
トン、と頭のてっぺんを手刀でうたれる。
「ちがう。やっぱりわかってない。そうじゃないだろ?仕事だとか接待だからじゃなくて、あんなハゲ、ビンタでもしてやってよかったんだよ。・・・や、違うな。ごめん、上司のくせにちゃんと守ってやれなくて」
手刀にしていた手の向きをかえ、頭を優しくなでられる。
ほっとしたのと情けないのと悔しいのと。
潤んだ目を悟られないよう、うつむいたまま首だけを振った。
「吉村が責任感強いのも知ってるけど、女なんだから。こういう時は守られるもんなんだよ。だから謝る必要なんてない」
「う・・・じゃあ、ありがとう・・・ございます」
「ん、いーえ」
ふっと微笑みうなずく高遠は、今まで見てきたどの高遠とも違って見えた。うさんくさい“THE・パーフェクト”でもなく、いろんな女性とのデートを謳歌する休日モードでもない。
今まででいちばんあったかい笑顔だった。