あまのじゃくな彼女【完】

男性社員百発百中の笑顔で、私との距離を詰め声を小さくして続けた。


「私、昔から要領いいほうだしあんまり怒られたことないんです。特に男の人」

あのうるんだ瞳で上目使いされたんじゃ、その辺の男ども誰も怒れないんじゃないだろうか。それもこの子は自覚しているはずだ。
そんな千葉さんは、今日もフルメイクにゆるっと巻髪、近づいた髪からはふんわり良い香り。心なしかいつもよりキレイ系な気がするけど、戦闘力MAXの肉食女子だ。



「だからあんなに直球で怒られるのって新鮮で。山下さんって、変な偏見とか無しで見てくれるし、他の人とは違うっていうか。私、俄然仕事やる気でちゃいました。だから吉村さんは山下さん狙っちゃだめですよ」

しれっと後輩に“私の獲物に手を出すな”と宣戦布告されたはずなのに、まったく嫌な気がしない。それほど千葉さんのやる気は本物のようだし、その証拠に早めに出社したはずの私より先にオフィスに来ていた。


山下さんと千葉さんかぁ。うん、意外といいかも。



「あの人かなり鈍感だよ?」

「知ってます。私がどんだけ上目遣いとかボディタッチ頑張っても、なーんにも響かないんですもん。こうなったら仕事で頑張るしかないです!」

「よしよし、応援する!ついでに・・・じゃダメだけど、仕事の方も頑張ってね」


誤解されやすい子だけど、決して悪い子じゃないようだ。嬉しそうに話す姿はまさに恋する女子で、見ているこっちが照れてしまう。

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