あまのじゃくな彼女【完】
「早えなぁ。そりゃ俺も歳とるってもんだわ。仕事ってのはどんな事してるんだ?」
片肘をテーブルにもたれるようにすると、その手でビールをちびちび飲みはじめた。その手もしわが寄っているけど、タケさんの声はでっかく響き若者にも劣らない。
「自分の所の商品を、CMとか雑誌の広告なんかで宣伝する部署にいるの」
「自分の所ってーとあれか、なんか作ってる会社なのか?」
「うん、そうだよ。“コーエン飲料”って知ってる?お茶とかスポーツ飲料も作ってるよ」
「おぉ、あれな!お茶よく買ってるぞ。ちったーめいちゃんに貢献してるってことか」
にかっと笑いながらグラスに口をつける。タケさんは視線だけ私の頭上のほうへと向けると、ふと視線を止めゆっくりとグラスから口を離した。
「おーい、宏太ぁ」
首だけを自分の後方へと向けると、宏兄へ向かって叫んだ。
「確か“コーエン飲料”ってあのぼんの所だよな?お前仲良かったろ」
「んー?あぁ、そうそう。確か今、働いてるんじゃないの」
宏兄も程よく出来上がってきたようで、首元までほんのり赤らんでいる。受け答えはしっかりしているからまだ大丈夫だろう。