あまのじゃくな彼女【完】
シュンちゃんは宏兄の同級生だ。
まだ私が幼稚園とか小学生の頃にうちの道場に来ていて、宏兄と一緒によく遊んでくれた。宏兄と仲がいいだけあって適当なところはあったけど、剣道みてくれたりジュースくれたり、邪見にすることなく優しいお兄ちゃんだった。
そしてシュンちゃんは私の初恋の人だ。
今となってはあれがそうだったのかな、という位の気持ちだけど。いっつもシュンちゃんにひっついては、宏兄やお母さんに怒られていた。シュンちゃんに褒めてもらいたくって、ご褒美のジュースが欲しくって剣道も頑張ってた。
「シュンちゃんかぁ・・・もしかしてすれ違ったりしてるのかな」
私がぼそっとつぶやいたのを聞くと、ぶはっとビールを吹き出しそうになりながら宏兄がこっちを指差した。
「おまっ・・・!!絶対シュンとすれ違っても分かんねえだろ」
「そっ・・・そんなことないよ!わかるって、た・・・多分」
顔も瞬時に思い出せなかったぐらいで、正直自信はない。だけど、じーっと見ればわかるはず。多分。
まだけたけたを笑い続ける宏兄を無視し、私は鉄板のお肉へと意識を変えた。