あまのじゃくな彼女【完】
大きな拍手とともに子どもたちが入場してきた。先頭を歩くのは、指導者であるお父さんだ。
大地は先頭から3番目。タケさんの見た手足一緒の歩き方・・・ではないけど、顔がこわばっているのがはっきりと見える。視線は宙を漂い、いまいち焦点があっていない。まばたきも忘れてそう。
「だいちー!」
私の呼びかけにビクッと肩を動かすと、きょろきょろと声を主を探しているようだった。
「しっかりがんばんなさい!!」
両手を口に添え叫ぶと、ココだと分かるように大きく手を振った。
私を見つけふんっと気合を入れる大地を見て、少し安心する。
その2つ隣りでお父さんがチラリとこちらに一瞥をやるのが見えた。“目立つんじゃない”と釘を刺すような視線に、手の動きを小さくしていった。
確かにどの保護者より私の声が大きかったようだ。相手道場の保護者もこちらを見ているのに気づき、しゅんっと前の席に隠れるように身体を小さくした。
大地は次鋒。5人中2番手だ。
先鋒の子は大地の1つ年上で、団体戦の経験もある。どうにか勢いをつけてほしい、と試合を見守った。
願いむなしく、あっという間に一本を取られ初戦は瞬殺。次鋒の大地は集中する間もなく、慌しく面を付けていく。横から他の子が声を掛けているけど・・・あれは全く聞こえてないな。