あまのじゃくな彼女【完】
「タケさん、久しぶり」
柔和な笑顔はいつも職場で見ているはずなのに。今日のそれはいつも以上にあったかくって、優しい視線でタケさんを捉えている。
何でタケさんって呼んでるの、係長。
「おぉ、やっぱりそうか。なんだ高校以来か?」
「うん、そうかな。卒業の時に道場に挨拶に行ったとき、タケさんも居たもんね」
「そうかそうか。お、あっちに宏太たち集まってるぞ。顔出せや」
「俺、宏太に呼ばれてたんだわ。行く行く」
優しく置かれていた手がゆっくり降りると、そのまま私の腕をつかむ。
成り行きを茫然と見守っていた私には、それを気に掛ける余裕などない。
タケさんの後に続くように、係長・・・じゃなく、シュンちゃんは私を連れて歩き出した。