あまのじゃくな彼女【完】
あの日。
腕を引かれるままに保護者席に戻ると、何人かの保護者達が係長に気づき駆け寄ってきた。
「シュンちゃんじゃないの!あらぁ立派になって」
「お久しぶりです」
「んまぁ、めいちゃん急いで行ったと思ったらシュンちゃん迎えに行ったのね。相変わらず仲良しなのね」
目の前で広がる会話は意識の片隅にどうにか引っかかるけど、いまいち理解できない。
なんでタケさんもおばさんも、シュンちゃんって呼んでるのよ。
「おぉ、シュン来たんか」
子どもたちに埋もれていた宏兄がようやく係長に気づいたようで、急いで駆け寄ってきた。
「なんだよ、もう芽衣子に会ったのかよ。面白い所見れると思ったのによ」
「お前、今日は来ないって言ってたじゃねぇかよ」
「いやいや、誘った時は来ないって言ってたんだって。騙してなんかねぇよ」
なぁ?と隣に立つ私に同意を求められ、かろうじで頷く。
その間も係長の手は私の腕を優しく掴んだままで、この訳が分からない状況に倒れそうなのを支えられているような気分だ。
「シュン・・・ちゃん」
「ん?」
当然のように係長が返事をする。右の口角だけ少しくいっとあげてこちらを見た。
あぁ、そういえばシュンちゃんもよくこうやって笑ってた。