あまのじゃくな彼女【完】
「シュンちゃんはそんなに髪茶色くなかった」
「短くしてたからだろ。この長さだとこんな色なんだよ」
「シュンちゃんはそんなに声低くなかった」
「悪かったな、声変りが長引いたんだよ」
「シュンちゃんは」
「めい」
何とか否定しようと必死なのが分かったんだろう。遮るように私を呼んだ。
「だって、シュンじゃない。係長の名前、“隼人ーはやとー”じゃないですか」
係長の代わりに宏兄が身を乗り出して話をつづけた。
「ほら、ガキの頃って漢字分かんないから。一文字とって隼(シュン)って誰かが呼びだしたんだよ。丁度、同じ道場に別のはやとってのが居たからな」
「めい、分かった?」
タケさんの時と同じように、あったかい優しい視線でとらえられた。それだけで昔の日々を懐古するのに十分だった。
そんな目で見られたら、もう何も言えるわけないじゃない。