あまのじゃくな彼女【完】


「何よ、宏兄たちは知ってたの?」

「俺たちも最近知ったんだよ。ほれ、こないだお前が送ってもらった時。いきなりシュンがめい抱えて来んだもん、マジびびったわ」

「そうよ、お母さんてっきりめいとシュンちゃんお付き合いしてるのかと思って嬉しくなっちゃったわ!ふふ」

傍で事の成り行きを見ていたお母さんが、ふふっと笑いながらとんでもない事を言い始めた。


「そうそう、お父さんもシュンちゃんに久々会いたがってたわ。今度ご飯でも食べにいらっしゃいな」

「ありがとうございます。後で先生にも挨拶に行かないと」

嬉しそうに話しているけど、シュンちゃんの顔にはいつもの営業スマイルが微かに重なった。
やっぱり部下の家って来づらいんだろうか。



「そういうことだから、めい納得してくれた?」

「う・・・は、はい。」


ようやく私の腕から手を放すと、シュンちゃんは自分の口元に手をあて吹き出した。

「ぷっ・・・今更敬語使っても遅いって。んま、職場では気を付けて」

「なっ、それくらいちゃんとわきまえてます!!昔がどうあれ、今は上司なんですから!」

「それはそれは。期待してるよ、“吉村さん”」


オフィスで見せる柔和な笑顔を貼り付け、係長は私に釘を刺した。


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