けれども何も、始まらない
ならばどういうことか。俺は理一さんが言った言葉を思い出す。
超能力。手を触れずに物を動かすサイコキネシス、瞬間移動のテレポート、人の心を読む……何だっけ。シンメトリー……じゃないな。語感は似ているけれど。
「惜しい。サイコメトリーだ。ただ、厳密には少し違うな。サイコメトリーは物の思念を読み取るもので、俺のは人の思念を読み取るもの。ただ、もしかしたら超能力じゃないかもしれないから、俺はただ能力って思ってるけど……そしたら俺は超能力者じゃなくて能力者って言うべきだったか。
あぁそうだな、些細なことだな。そんな訳で俺のことが判った所でどうする、ってそうだな、場所は移動したいよな。となれば立ち話もなんだしあじさい公園にでも行くか。あ、悪い。それじゃあ何か言うまで黙ってるから」
そんな細かい所は気にしてないんだけど。とにかくまず詳しく話を訊きたいな。ちょっと待った、余りにも一方的に喋り過ぎるって。
そんな風に口を挟む前に、理一さんは俺の発言前の言葉に反応して話し掛けてくる。
思考を読まれてる、と結論付けるまでには時間が掛からなかった。
どうやら理一さんは本物の超能力者らしい。