5日だけの二人
話を聞きながら中村は店内を見渡した。 確かに店内の雰囲気は、洋食屋と言うよりは洒落た喫茶店を感じさせる。
「そうなんだ? 若いのにドラマチックな人生歩んでるのね。」
「若さはお互い様だろ。 それに、雄子って年齢よりさらに若く見えるよね。 どう見ても高校生くらいにしか見えないよ。」
“高校生にしか見えない”、そう言った桐山だが、内心は中学生みたいだと感じていたのだ。 それほどまでに中村は幼く見える。 さっき中村が免許証を見せなければ、夜も遅い事だし彼女の事をさっさと家に返していただろう。
「若く見えるのは嬉しいけど、子供に見られるのがほとんどだよ。少しだけでいいから大人の女的な雰囲気を出したいな。」
幼く見られる事に慣れているのか、中村は軽くため息をつきながら桐山を見た。
「いいんじゃないかな? そうゆう趣味の人だって大勢いるんだし、それに雄子は可愛いから大丈夫だよ。」
相変わらず桐山は手を休めずに調理をしている。 だから雄子に対して可愛いと言った言葉もあまり深く考えての事ではなかった。
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