5日だけの二人
それから約一時間、二人はドリンクのやりとりを続け、夜はすっかり更けていた。 中村が腕時計を見た時には既に12時を回っていた。
「嘘っ!? もうこんなに時間過ぎたの? 全然気が付かなかった、ごめんね、もう閉店時間過ぎてるよね?」
終電を逃した焦りもあったが、何より桐山を遅くまで付き合わせてしまった事が申し訳なかった。 しかし桐山は笑顔で店の出入り口を指さすと、
「大丈夫だよ、店なら最初に閉めてあるからさ、俺は今プライベートで雄子とここにいるんだよ。 謝る事なんて何も無いからね。」
気を使っての事では無く、桐山は本心で答えた。それがかえって中村を焦らせたのだが、今の状況では何かお礼を言う以外のお返しはできなかった。
「ありがとう。今日は本当に楽しかったよ、料理も最高においしかった。 絶対また来るよ、今度はちゃんとメニューに乗ってるやつも食べてみたいしね。」
ここに通って常連になる事で、桐山に少しでもお返しをしようと中村は考えた。
「そうだね、通常のメニューも食べて欲しいね。 そんなに気を使わなくていいからさ、気が向いたら食べに来なよ。」
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